清水 千佳子

AYA week 2025に寄せて

医者になって28年たちます。私がAYA世代だったころにくらべると、がん医療は様変わりしました。局所治療にはどんどん低侵襲な選択肢がでてきましたし、生物学的な根拠に基づく抗がん薬が増えました(今までにない副作用対策が求められるようになりましたが)。また、支持療法や緩和ケアもちょっと前に比べると、ずっと進歩しています。そんななかで、AYA世代のがんも、治療成績がだいぶよくなってきています。

でも、中には、まだ十分に治すことが難しいがんがあったり、患者数が少なくて治療開発が難しいがんがある。住んでいる地域によって医療や社会のリソースの格差があって、どこにいても同じ選択肢があるわけではない。インターネットやSNSに情報はあふれているけれども、中身は玉石混交、どんな情報にアクセスしたかで、自分の未来像が変わってしまう。いろいろ便利になったようで、ある意味、難しい時代です。

キャリアや人間関係など、若いからこその悩み…変えられない病気の現実を前に、何を大切にして、自分は生きていくのか。AYA世代のがんの当事者の皆さんから、若さとは、出会いや経験を通して自分を変えていけるしなやかさであると、教えていただきました。医療や社会もそんなしなやかさから学びたい。AYA世代のがんを学び、考えることは、近未来の望ましい医療や共生のあり方を考えること。今AYAも元AYAも、今がんも未がんも、医療者もそうでない方も、AYA week 2025が提供するさまざまな機会を通して、ぜひ、一緒に考えませんか。

AYAがんの医療と支援のあり方研究会 理事長
清水 千佳子
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